『物語論 基礎と応用』は、以下の2つの部で構成されている。
「第Ⅰ部 理論編」の第一章は「「物語」の形態学」となっている。
物語のパターンの分析についての研究の歴史的経緯が説明されていて、最初にウラジーミル・プロップという人による分析が紹介されている。これは1928年の著書によるもののようなので、古典という感じだ。
そして、プロップによる分析は、ロシアの魔法昔話に限定している。
プロップは、魔法昔話に現れる要素を以下のような定項と不定項に分けて分析した、とのこと。
プロップの理論によると、物語は人物の行為によって筋が展開され、しかもその筋に関係する行為はどの物語でも同じだというのである。そしてこの物語の筋に関わる人物の行為を機能と呼んだ。
無生物が主人公の物語もあるかもしれないが、それでも、物語作品としてその主人公が人間であるかのような感情表現がされ、その主人公が何らかの意思決定をして行動しているような表現がされなければ物語として成立していないような印象を受けそうだ。その上で、上記の「人物」は広い意味で解釈ができる。
そして、ここで言う「機能」というのが何を指すのかについて、このあと詳しく触れられていくが、この「機能」は「ロシアの魔法昔話において、お決まりの展開」についてのコレクションという感じである。
プロップは「機能」(お決まりの展開)を31個発見したそうで、著書ではその一部が紹介されている。(例えば「機能①」は「家族の成員のひとりが家を留守にする(留守)」、「機能②」は「主人公に禁を課す(禁止)」など)
この「機能」は「機能①」から「機能㉛」まであり、展開は数字の小さい順に発生する、としている。ただし、機能が省略される場合もあるという。
プロップの理論では、「機能」、つまり人物の行為に従属する存在であって、キャラクター性やその心理などはあまり重要ではなく、何をするのかという役割こそが重要であるとしているとのことだ。
そのため、プロップは物語における登場人物を「敵対者」や「贈与者」などの役割で呼んでいる、とのこと。
分析の対象がロシアの魔法昔話に限定されていることもあって、プロップの理論が通用しない現代の物語作品もあるかもしれないが、それでも「お決まりの人物の役割がある」という考え方、視点そのものは現代の物語作品でも通用しそうである。
ゲーム向けの脚本に特化した技法の前に、まずは物語技法そのものから調査、学習を進める。
そして、物語技法自体に入る前に、まずは物語の構造の分析など基礎分野から入るため「物語論」から進める。ゲームの物語であっても、それは「物語」であるので。
ということで、橋本陽介 著『物語論 基礎と応用』を読み進める。