近年、「死にゲー」と呼ばれるジャンルとして認知されるゲーム作品が増加しており、人気ゲームジャンルの一つとなっている。「死にゲー」は「難易度が極端に高く何度もミスをすることを前提としたゲーム」として認知されているが、この解釈に加え、実態としては「ゲームが攻略可能となる戦略の幅が狭く、かつ、その攻略方法に気づきにくい」というような特徴を持つ。そのため、「死にゲー」のプレイヤーはゲームの攻略のための試行錯誤を繰り返すことが求められる。
「死にゲー」の事例として、FROMSOFTWARE社[1]が開発した『DARKSOULS』シリーズ[2]や、『SEKIRO : SHADOWS DIE TWICE』[3]があり、移動経路を安全に進むことや,ボスの倒すことに関して試行錯誤を多く求められる。Flashゲームの『しょぼんのアクション』[4]では、初回プレイでは回避不能な罠が多く用意されている。
「死にゲー」は、その高い難易度を実現させるためにプレイヤーキャラクターの高度な操作技術を必要とする、いわゆる「アクションゲーム」であることが多い。
しかし、プレイヤーキャラクターの高度な操作技術を求められることから「死にゲー」を嫌う人も多い。そこで、「アクションゲーム」とは異なるゲームジャンルに対して「死にゲー」の特徴を持たせることで、「死にゲー」が嫌いだったプレイヤーでも好んで遊べる、新たな「死にゲー」を開発できるのではないかと考えた。
本研究は,高度な操作技術を必要としない戦略の試行錯誤が多く求められるゲーム作品を開発し、新たな「死にゲー」を開拓することを目的とする。
高度な操作技術を必要としないゲームジャンルとして「オートバトラー」と呼ばれるゲームジャンルを選択する。
オートバトラーとは、2つのチームが試合開始前に、チェスのような盤上に駒となる要素(主にキャラクター)を事前に配置しておき、試合開始後に駒となる要素が自律的に行動することで相手の駒となる要素を全滅させることを目指すゲームジャンルである。プレイヤーは、駒となる要素が持つ特性や戦略的な駒の位置を考えて自身の駒を配置することにだけ注力すれば良く、「アクションゲーム」で求められるような瞬発的な行動の判断と操作は必要ないものとなる。
プレイヤーは、最初に16種類のキャラクターの中から、図1のキャラクター選択の画面から、使用したい4つのキャラクターを選択し、選択した4つのキャラクターを利用してオートバトラー形式の戦闘を繰り返す流れとする。
キャラクターには表1のように、7種類のステータスと特有の性質である「パッシブ」が存在し、各種類のステータスには値が振り分けられている、そして各種類のステータスに振り分けられている値が高いほど、そのステータスに特化したキャラクターということになり、キャラクターの強弱や個性が生じるようになる。
ステータス名 | 効果 |
---|---|
筋力 | 値が高いほど攻撃力が高い |
体力 | 値が高いほど最大体力が高い |
体幹 | 値が高いほど退けない |
速度 | 値が高いほど行動速度が速い |
免疫 | 値が高いほど魔法攻撃に対する耐性がある |
守護 | 値が高いほど物理攻撃に対する体制がある |
信仰 | 値が高いほどパッシブの効果が高い |
ゲーム内の世界では図2のように、複数の「島」があり、プレイヤーはスタート地点となる島から他の島へ航海によって移動し、目的地を目指すことをゲームの目標とする。
また、他の島に航海するためには、距離に応じた日数を経過する必要があり、航海中は図3のように、1日ごとに指定された4つのイベントのうち1つを選択し、そのイベントに応じた戦闘をクリアしなければならない。
イベントには5段階の難易度が設定されており、選択したイベントの難易度によって戦闘時の敵キャラクターの能力値は変化する。
また、戦闘時の敵キャラクターの能力値は、常にプレイヤーが持つキャラクターよりも強くなるように設計されている。そのため、プレイヤーはキャラクターの種類ごとの能力を生かし、盤面上のキャラクターを配置する位置の工夫しなければならない。
戦闘に勝つと、選択したイベントによって指定されている「アイテム」を獲得できる。
アイテムの種類は「帽子」、「服」、「武器」、「靴」に分類され、キャラクターごとに各種類のアイテムを1つづつ装備できる。また、装備しているアイテムによって、装備しているキャラクターのステータスが変化する。そのため、プレイヤーはキャラクターに装備させているアイテムを変更させることにより、戦略性を生むことができる。
戦闘をクリアできなかった場合、航海前にいた島のセーブデータをロードするため、同じ条件で再び攻略に挑まなければならない。そのため、プレイヤーは戦闘をクリアできなかった理由を明らかにし、改善することを求められるようになる。
既存の「死にゲー」のゲーム作品で遊んだことのある大学生4人に本研究で制作したゲーム作品を試遊してもらう。試遊後、被験者に①「高度な操作技術を必要とするゲーム作品だと思いますか」、②「攻略の試行錯誤が求められるゲーム作品だと思いますか」という質問を行い、「全くそう思わない」「少し思わない」「どちらともいえない」「少しだけ思える」「とても思える」の5段階で回答をしてもらう。回答をそれぞれ1~5の点数として換算し、各質問ごとの回答の平均点を算出し、評価を行う。
制作したゲームのタイトルは『Liverty Saga』とし、ゲームエンジンの『Unity』を用いて開発を行った。
被験者の試遊後の質問の回答結果の点数は表1のようになった。
① | ② | |
---|---|---|
1人目 | 1 | 2 |
2人目 | 2 | 2 |
3人目 | 1 | 4 |
4人目 | 1 | 5 |
平均点 | 1.25 | 3.25 |
質問①の結果から、高度な操作技術は必要としないゲーム作品とすることができたように思う。しかし、攻略の試行錯誤を必要とする点に関しては意見が分かれる結果となった。
攻略の試行錯誤を必要とする点に関して意見が分かれることに関して、狙い通りではない結果となった。
制作したゲーム作品では、攻略の試行錯誤を必要とするような内容にはしていたが、被験者がオートバトラーゲームの攻略が得意であった場合に、少ない試行錯誤によってゲームが攻略できてしまうため、あまり試行錯誤が必要とされないゲームであると認識されてしまったのではないかと考える。
本研究では、高度な操作技術を必要としないゲーム作品とするためにオートバトラーのジャンルを採用したが、他のゲームジャンルのルールを採用することでも、本研究と同様の目的を達成させることができる可能性がある。
また、攻略が得意なプレイヤーが挑戦した場合であっても、ある程度の試行錯誤を必要とするような仕組みの実現が求められる。
FromSoftWare社のホームページ,"
https://www.fromsoftware.jp/jp/, 参照Oct. 10, 2020.
"DARKSOULSシリーズのホームページ," Google,
https://www.fromsoftware.jp/jp/, 参照Oct. 10, 2020.
SEKIRO : SHADOWS DIE TWICEのホームページ,
href="http://waraiplus.com/colum/basic_theories_of_humor.html">http://waraiplus.com/colum/basic_theories_of_humor.html,
参照Oct. 10, 2020.
しょぼんのアクションがプレイ可能なページ,
http://chibicon.net/slink/g012202/, 参照Oct. 10, 2020.
Crieitは個人で開発中です。
興味がある方は是非記事の投稿をお願いします! どんな軽い内容でも嬉しいです。
なぜCrieitを作ろうと思ったか
また、「こんな記事が読みたいけど見つからない!」という方は是非記事投稿リクエストボードへ!
こじんまりと作業ログやメモ、進捗を書き残しておきたい方はボード機能をご利用ください!