2019-07-29に更新

時勢

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二社目

Apple のリクルーターから初めて連絡をもらった二日後、Amazon のリクルーターからメッセージが来た。

「Amazon Alexa のチームが対話プラットフォームのエンジニアを探していますが、話を聞きませんか?」

Apple の Siri に Amazon の Alexa と立て続けにお誘いが来たのは時代の流れだろうか。この流れに乗ることができれば、何か面白いことに出会えるかもしれない。そう思って僕は二つ返事で電話の予定を入れた。

Apple のリクルーターとの短い電話があった数日後、僕は再びオフィス近くのスターバックスにやって来た。テーブル席が空いてなかったので、僕はドリンク提供カウンターのすぐ横の席に腰掛けた。すぐ隣で店員と客がやりとりをしているので、少し落ち着かなかった。電話は予定より10分遅れてかかって来た。

「タロー、ハーイ、Amazon リクルーターのアマンダです。お、遅れてごめんなさい、まだ時間は大丈夫?」

アマンダは少し疲れた声で、切羽詰まった様子だった。

「ハイ、アマンダ。大丈夫ですよ。」

「よかった。それじゃあ、まず、あなたのことについて聞かせてもらえる?」

「ええ、いいですよ。」

今度の会話は予期していた流れを辿った。僕は用意していたノートを見ながら話を始めた。

「僕は今、SF ベイエリアにあるスタートアップで働いています。このスタートアップは機械学習・ディープラーニングを使った会話データの処理サービスを行っていて、ビジネス向けに API を提供しています。

僕はその中で、データ処理のパイプライン周りを担当しています。顧客から集まるデータをデータセットにまとめるわけですね。それをチームのサイエンティストが利用して新しいモデルの訓練に使うわけです。

パイプライン自体はバックエンドなのですが、設計段階ではデータを提供してくれるパートナーとのすり合わせが必要になるので、ここら辺のコミュニケーションも行っています。

他にもこのデータを処理する際にデータの拡張という作業を行うのですが、このための内部ソフトウェアの開発も行っています。

それに加えて、僕は日本語が第一言語なので、日本語に関しては訓練されたモデルの評価を行ったり、僕自身がモデルを訓練したりしています。

サイエンティストとエンジニアの間を行ったり来たりすることが多い立場ですね。」

「なるほど。日常使いではどのような技術を使ってますか?」

「メインは Python になります。TensorFlow や PyTorch といった機械学習パッケージを使う場合や、API リクエストを実行する場合、あとは、Bash スクリプトをラッピングしてインターフェースを綺麗にする場合などが多いですね。あとはたまに C++ を使います。Amazon は Java と聞いてますけど、Java に関しては昔触った経験があるので、業務で使えるようになるのにそんなに時間はかからないと思います。」

「なるほど。どうして新しい仕事を探しているのですか?」

「この業界はここ数年で大きく変わっています。基本的な音声認識の精度はもはや向上の余地がないレベルになり、自然言語処理技術の向上によって、業界の注目は、これらの技術を基礎にしたアプリケーションの構築に向いています。今回そのような機会をもとに僕もキャリアのフォーカスをそちらにシフトしたいと思ったからです。」

この理由は後付けだった。リクルーターと何を話そうか考える中で、オフィスで聞く話や、ニュースで聞く動向、今回の案件の内容を組み合わせた内容だった。後々エンジニアと話をするには弱い内容だが、リクルーターと話すにはこれで十分だった。

「わかりました。では Alexa の話をしますね。今私は Palo Alto にある Amazon Alexa のチームに加わるエンジニアを探しています。Alexa はご存知ですか?」

「ええ。ただ、持ってはいないですけどね。はは。」

「Alexa にはたくさんのサブコンポーネントがあるんですけど、対話型インターフェースと言語理解が重要になるわけで、自然言語処理に携われる方を探しているんです。興味ありましか?」

「面白そうですね。ぜひ次のステップの話を聞かせてください。」

「分かりました。次のステップはコーディングテストになります。URL を送りますので所定の期限までに受けてもらえますか?」

「分かりました。ちょっと今週は忙しいので来週末まで待ってもらってもいいですか?」

「いいですよ、では都合がつきましたら連絡してください。」

「分かりました。ありがとうございます。」

電話を切ってから、僕は今後の流れを考えていた。ジェームズが繋いでくる Apple のマネージャーとの電話があるから、それに集中しよう。そして、時間を見つけてコーディングテストの練習をしなければならない。忙しくなりそうだ。

第四話へ続く。

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view_list [連載] GAFA で就活した回想録
第1回 きっかけ・シリコンバレーの雇用事情
第2回 はじまり
第3回 時勢
第4回 pow(10, 100)
第5回 電話そして電話

然るエンジニア🙊

「GAFA 全社で就活した回想録」不定期連載中です。(書きだめがなくなったのでおそくなります。。。)

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